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さとう社会問題研究所コラム

今回は、法律学の観点から論じてみたいと思います。
DV法(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律)という法律があるのですが、 その前文で「配偶者からの暴力の被害者は主に女性であり」「女性に対する暴力を根絶」と書いてあります。

まあ、それは大いに結構な事なのですが、以前から、「男性のDV被害」と「DV法自体の問題」が指摘されていました。

DV法では「配偶者からの暴力の被害者は主に女性」とされているのですが、 DV被害の調査を調べてみると「男性の被害経験は意外と多い」という調査結果になることも少なくないそうです。 これは「被害者」というものの計測方法の問題だと考えられます。 たとえば、「被害届の件数」や「公的機関への相談件数」として把握している場合です。

その場合、「暴力の被害者は主に女性」ではなく「暴力被害の訴えは主に女性が多い」になり、 同時に「暴力の被害者は主に女性」という前提は崩れます。 「暴力の訴えの数」は「暴力の被害の数」ではないからです。

心理学では「ジェンダー・バイアス」という考え方があるのですが、 「DV被害は主に女性」という法文が、十分な調査の上でのものでないとすれば、 この法律は「予断に基づいて制定された法律」という誤解を与える恐れがあります。

また、、「女性に対する暴力を根絶」ということですが、「暴力を根絶」で立法目的は果たされるはずですので、 わざわざ「特定の性別に対する暴力を根絶」とした法文の趣旨が分かりません。 「配偶者からの暴力の防止と被害者の保護」であるならば、先の通り十分な調査をせず「女性」という言葉が付いていることで、「被害と保護に対し予断のある法律」という誤解を与える恐れもあります。

DV法の立法目的は男女共同参画社会の推進のはずですが、 「DV被害の保護活動」が男性に不当なものになっているという「DV法の被害男性」という方からのお話をうかがったことがあります。 また、「離婚裁判の中で、DV被害を訴えることで、有利な審判を引き出そうとする」とうかがったこともあります。 「離婚裁判を有利に進めるためにDV法を悪用する弁護士」がいるそうです。

以前、「証拠不要のDV法の改正」とうかがったことがあるのですが、第4章10条から15条の「保護命令」の事だと思います。 DV法の法政策の趣旨自体は正当なものと考えておりますので、「主に女性」「女性への暴力の根絶」という、 裁判官の法解釈に予断を与える法文を削除し、「DV被害は男女に存在すること」「すべての暴力の根絶」とすることが望ましいと考えております。

私は、DV被害の女性からのご相談も受けているのですが、弁護士の報酬や親権目的でのDV法の悪用が、男女共同参画政策を本質から歪め、本当にDV被害に苦しんでいる女性、本当に性差別に苦しんでいる女性がないがしろにされている事が一番気がかりです。


2012年2月17日 著作物です。無断転用は禁止します。 さとうかずや(さとう社会問題研究所)


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