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さとう社会問題研究所コラム

あるベーシックインカムの催しに参加してに呼ばれたので参加しました。
都合で途中参加になってしまいましたが・・・。

この講演会では経済学的な検討が中心でした。
財源は政府紙幣の発行、つまり、お金の増刷という一般的なデフレ対策の手法によるそうでした。

ベーシックインカムを導入する場合、経済的な有効性だけでなく、(1)勤労美徳や「無条件でお金をもらう」、「バラマキ」ということに対する心理的な抵抗や嫌悪感の払拭、(2)産業と銀行が信用創造でお金を増やすという、既存の秩序やシステムとの併存の可能性の証明、(3)法律的には、憲法27条の労働の権利及び義務や29条の私有財産制に対する新たな見解が必要になると思います。

そもそも、政策とは多角的な検討が必要なものです。

それと、ベーシックインカムを最低生活の保障として検討する場合、絶対的貧困(飢餓)と相対的貧困(格差)というどちらの視点の検討なのかも大事な所だと思います。
今回は、経済政策と「最低生活費の保障」(絶対的貧困)ということでしたが、法律学では「最低生活費」というものに対する十分な検討がないというのが私の感想です。
一般的には「生存権」という言葉を使って説明すべきだと思われますが、憲法25条の生存権にいては、朝日訴訟の最高裁判決などでプログラム規定説と、「生活保護制度に掛かる最低限度の生活は厚生大臣の裁量による」という「事実上の生存権の空文化」があるため、法律学では「意味のない検討」と考えられてしまいます。
法律学で「最低生活」というものを考えるのも、とても難しいというのが私の感想です。

ベーシックインカム制度を導入する方法として、社会保障制度の一元化と言う形で、生活保護制度や年金制度を廃止する形での導入。
その財源として、高税率の所得税制度という考えもあるようです。
これは、金融政策としてではなく、財政政策として実行されるものなので、現時点では、こちらの方が、より理解も実効性も高いのかも知れません。


参考条文
日本国憲法
第27条 すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。

第29条 財産権は、これを侵してはならない。
2 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。

2012年2月19日 著作物です。無断転用は禁止します。 さとうかずや(さとう社会問題研究所)
2013年6月、文の記述を変更し、一部加筆しました。


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