さとう社会問題研究所では、カウンセリングやストレス遮断、対人関係のコンサルティングなどによる心理的な訴訟支援を行っております。

さとう社会問題研究所コラム

さとう社会問題研究所では、機能不全家族の方からのご相談にも応じております。
昨年から、離婚訴訟における『連れ去り』や『引き離し』(PA)についてもお話をうかがう事があり、前者については法的な、後者については心理的な社会問題として考えるようになりました。

PAというのは、離婚後に同居親が子供に元配偶者に関するネガティブ情報を与えることにより、 子どもに心理的な悪影響が現れると言われているのです。

結果的に、子どもは元配偶者に対し、ネガティブなイメージを持ってしまい、 面会交流なども拒むようになることがあるそうです。
『洗脳虐待』とか『マインドコントロール』とも言われております。

ただ、PAについては、医師や法学者などが「疾患ではない」と批判をしているそうですが、 それは学問と理論の世界の話に過ぎず、 現実の出来事に対する批判というのは、私はナンセンスだと思っています。

たとえ、PAが病気でないとしても、結果的に元配偶者に遭いたくないと思わせることができれば、 元配偶者に対する関係性攻撃としては成功しているわけですし、 子どもの精神にも悪影響を与えることができれば、虐待もできるわけです。
(関係性攻撃というのは、いじめの手法でもあり、『自分の為』に行うものなのです。)

私がDVの議論の中でPAを持ち出したのは、PAは離婚後の事として考えられているのですが、 この「ネガティブイメージで子供を誘導する」ということは、実は、通常の家庭でも行われているからです。
たとえば、 父親や教師に対する子供の尊敬が低いという話がテレビなどで取り上げられていて、知らない人はいないと思います。

その原因の一つとして、家庭内で、配偶者の陰口を子供の前で言い続けるという事があります。
言っている方としては、日頃の愚痴を子供に聞いてもらってすっきりしているのかも知れませんが、 その愚痴が具体的であればあるほど、一種の『教育』として子どもの心には影響を与えることになります。

一般的に、『家庭で子供と接することが多い親』というのは母親になりますので、 当然、子どもの心は父親から離れていくのです。

これは、教師に対しても同様の事が言えます。
近年、『教師の能力不足』のようなことが言われておりますが、高学歴化で学卒率も5割ほどになっています。
教師は学卒者がなることが前提ですが、父母の半分も教師と同学歴で、教師というのは『特別な人』ではなくなっています。
そのため、保護者としては、教師の能力に対する評価が相対的に低下して当然です。
評価が下がるという事は、当然、敬意も払われなくなります。

子どもというのは、教師よりも親から多くのことを学びますので、 親のそういう姿を見て育った子供が教師に対して抱くイメージも、敬意の対象ではなくなるという事です。

こういう形でのPAというのは、元々、夫婦仲が悪く、 子どもに家族システム内の過剰な負担を押し付ける機能不全家族に限らないという事が一番厄介な事だと思います。
なぜなら、こういう形で起こるPAというのは、多くの場合、悪意で行われていないからです。


2012年3月7日 著作物です。無断転用は禁止します。 さとうかずや(さとう社会問題研究所)


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