さとう社会問題研究所では、カウンセリングやストレス遮断、対人関係のコンサルティングなどによる心理的な訴訟支援を行っております。詳細はページ下をご覧ください。

さとう社会問題研究所コラム

さとう社会問題研究所では、「対人関係のコンサルティング」を業務として行っております。
「対人関係」というものは、どなたにも経験があり、ご自分の人生の経験から、それなりの解決が図れますので、他人に相談するほどのことではないとお思いの方も、とても多いと思います。

最近、「和解」について心理臨床の側面からの助言の仕事をお受けしています。
これも、当研究所の、「対人関係に関するコンサルティング業務」になります。

和解の目的は「信頼関係の回復」による「対人関係の維持」ということになります。
本質的には、個人と個人との問題になるのでしょうが、 問題の根本にあるものとして、「対人関係のイメージ」というものがあると考えております。

これをお読みになっている皆さんにも、それぞれに、まったく違った対人関係のイメージがあるはずです。
みなさんも、「民族」とか「文化」という言葉で、外国と自国を比較したり、 「地域性」という言葉で、都道府県や市町村を比較したり、ということは、よくあると思います。
その際、比較するために、みなさんのイメージを用いることが多いでしょう。
この場合、イメージとは、経験やご自分で収集した情報ということになります。

私の考える「対人関係のイメージ」とは、その最も小さな単位、 「個人性」や「家族性」というものに、注目したものだと言えます。
ご自分の生育、家族や交友から、このイメージは構築されており、みなさんの対人関係も、それを基礎に構築されていると思います。
(ここで「個人性」としているのは、イメージに関することですので、先天的な要素もある「個性」ではなく、 発達過程や過去から現在に記憶や経験に基づく影響という、後天的な要素を強調するためです。)

さて、対人関係についてのご相談、「和解」や「個人と個人の問題」についてのご相談を受ける中で、 当事者間にある「対人関係のイメージの齟齬」というものが、背後にあると思われることが多いです。

対人関係の問題は、主に、「コミュニケーションギャップ」と「コミュニケーション不足」によるものが多いです。
このコミュニケーションギャップがあるとき、当事者間のコミュニケーションにより、それを埋めることが基本です。

しかしながら、ご自分の中の対人関係のイメージでは、理解できない出来事があり、 それを、ご自分の知るところのみに従って、無理に解釈し、対応しようとするときに、 相互の溝を埋めるためのコミュニケーションが、コミュニケーションギャップを拡大してしまうことが、対人関係の問題の中では多いようです。
これは、「専門家による無理解」や「人の苦しみに対する無理解」の問題と同じ構造でもあります。

私の場合、ご相談くださる方に、「機能不全家族の出身者」「被虐待サヴァイバー」や、 「いじめ被害者」「DV被害者」など多様な心理的背景をお持ちの方がおられます。(もちろん、このどれにも当たらない方もおられます)
この4者、私は「虐待被害者」と一括して対応しているのですが、それは、「心の傷」や「心理的不調」に対するものであって、 「対人関係の基礎的な側面からの問題」という観点では、前2者と後2者まったく異なるものとして、ご説明をしています。

特に、これらの方のイメージの違いは、「信頼関係の構築と崩壊」という点で、大きな違いがあると考えています。

具体的なご説明は、やはり、個別具体的なことですので、ご相談いただいてからになるのですが、 「発達過程での障害の有無」というのは、検討の際には外せない事です。

たとえば、被虐待サヴァイバーの方の場合、幼少期から、親や家族からの虐待を受けておられることが多く、 その対人関係のイメージに与える影響は、早期から顕れると思われます。
しかしながら、同じ、家庭内での虐待である、DV被害者は、必ずしも、幼少期の虐待を経験しているわけではなく、 成人後、ご結婚の後、初めて、家庭内での深刻な虐待により、その対人関係に深刻なダメージを受けることが多いと思われます。
(注1:この違いは、「精神的虐待」と「精神的DV」の、説明でも差があったりします。詳細は文末に記載。)

「信頼」や「不信」というものに対する基点が、当然、異なっていることが多く、 当然のことながら、これらの方たちの、対人関係のイメージの基礎にあるものは、大きく異なっていると思われます。

たとえば、「境界性人格障害」(境界性パーソナリティ障害=BPD)という精神障害があり、その行動特徴として、「理想化とこき下ろし」というものがあるのですが、 これは、BPDに限ったことではなく、「極端に他人を信じてしまう境遇にあった方」には、よく見られることです。
このBPDと「うつ」が似たような症状として上げられることがあったり、 アダルトチルドレンの方や機能不全家族のご出身の方が、心理的な問題を抱えたとき、 うつやBPDとの診断がされやすいことも、こういうことと関係があるのだと考えております。

最近、こういう心理的な背後関係に詳しくない方からの対人関係のご相談があり、 ご自分の境遇との違いを理解できないまま、「自分なりの解決」を図ろうとして、問題が深刻化してしまっている事例がありました。

揺らいでからでは遅い、とても大切な対人関係もあると思います。
また、対人関係によるストレスは、心身の不調に直結するものでもあります。

私としては、問題が深刻化する前に、大事な方とのコミュニケーションギャップや、対人関係のイメージギャップなど、対人関係の基礎的な面で、違和感を覚えた時点から、当研究所のコンサルティングをお勧めしております。


注1:この違いは、「精神的虐待」と「精神的DV」の、説明でも差がある。
精神的DVは、「被害者の主観」が特に重視され、「自分が嫌だと思ったこと」という説明をなさる方もいるが、
精神的虐待については、こういう「被害者の主観」はあまり考慮されず、ある程度の定型化がなされている。
これが、DV法における、「精神的DVの定義の不明確性」という問題につながっていると考えられる。
法律における定義の不明確性は、精神医学、心理臨床における判断の柔軟性という長所ではなく、 裁判官による法解釈に、多くが委ねられることになるため、司法判断の公平性、加害者になる側の予測可能性などの点で問題となって顕れている。
司法判断と心理臨床の判断は、根本的に役割に違いがあることを忘れてはならない。


2012年10月25日 著作物です。無断転用は禁止します。 さとうかずや(さとう社会問題研究所)


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