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さとう社会問題研究所コラム

1、はじめに
離婚を巡る夫婦のやり取りの中では、子どもは、何もできないまま、ただ家庭が壊れていくのを眺め、片方の親との離別を余儀なくされる事が多いです。
親との離別に至る経緯には、様々なものがありますが、「別居している親、別れた親を、子どもに逢わせない」という行為、引き離し(PA)と呼ばれるものがあります。
この「引き離し」は「洗脳虐待」とも呼ばれますが、法律上も、社会政策上も、「母親優先」「現状維持」「DV法」などの形で、追認されている事が多く、当研究所でも、この事例に関するご相談があります。
当研究所では、「アダルトチルドレン」と呼ばれる、虐待被害者、機能不全家族の出身者へのカウンセリングが、相談業務の原点にあり、多くの虐待事例をうかがう中で、離婚家庭、引き離し家庭との共通点、類似性を感じる事があります。
今回は、この点に付いて、検討してみたいと思います。

2、離婚を巡る期間には、3つの危機的な局面が存在する
まず、離婚を巡る期間には、「同居」「別居」「再婚」という、3つの危機的な局面があると考えています。
「同居の危機」というのは、父母が同居しながら、子どもの前で、あらゆる形で争う事です。
「別居の危機」というのは、片親が子どもを置いて家を出る、子どもが片親に連れられて家を出ることです。
「再婚の危機」というのは、父母が離婚後、監護親となった者が再婚をする事です。

この3つに共通しているのは、巻き込まれる子どもにとっては、「大迷惑」そのものなのですが、父母からの免れる事のできない心理的影響が強くあるという事です。

(1)同居の危機では、子どもは、目の前で両親が争う姿を見て苦しみます。
「自分を責める」というのは、児童心理学ではよく言われることですが、両親の間に立ったとき、両親に最大の気を遣っているにも関わらず、父母から言われる言葉で苦しめられることも多いです。

(2)別居の危機では、子どもは家を出る事で家を奪われ、片親がいなくなる事で、親も奪われます。
子どもは一緒にいる親に最大限、気を遣います。「居ない親の悪口を言う」「別居親に会いたくない」というのは、「片親引き離し症候群」(PAS)の症状としても言われましたが、これは「陰口」の類、他者への感情を共有する事で、ある種の絆を確認する行為です。
陰口としては、保身の意味もあり、いじめの構図と同様ですが、一般の陰口と異なり、片親が居なくなった事で、「見捨てられ不安」という鎖が、子どもの思考を制限します。
監護親に対する過剰な気遣いと、見捨てられ不安に対する恐怖からの強い保身の意図、親が子どもを縛る鎖は、親が思っている以上に強力です。
虐待など、子どもに危害を加えていた場合を除き、「子どもが逢いたくないと言っている」のか、「子どもに逢いたくないと言わせているのか」という問題が常にあります。
以前、受けたご相談ですが、16歳のときに母親が家を出て他の男性の元に行って以降、20年間月経が無いという方もいました。
子どもが親を失うという事は、それくらいの衝撃になることもあります。

(3)再婚の危機では、子どもは、心の中に居る親まで消されます。
監護親が新たな配偶者を連れてきて、「この人があなたの新しい親」と告げます。
監護親としては、子どもが自分の再婚を祝福し、新しい配偶者を「親」と呼ぶ事を望むのですが、期待通りの反応が得られず、虐待に至る例もあります。
先日の児童虐待に関する調査でも、「内縁の夫」というのが、多くを占めていたそうです。
これは、「内縁の夫=虐待の潜在犯」という意味ではありません。
夫婦にとっては離婚をすれば赤の他人でも、子供にとっては親は親と言う事実が覆らないというだけのことです。
監護親にとっては、人生の新たなパートナーとして選んだ相手でも、子どもにとっては、親とは異なる人物を、いきなり子どもの前に連れてきて、「あなたの親」と紹介する。
子どもは、新しい親と巡り会った喜び以上に、逢えなくても、口に出せなくても、親に気遣って「逢いたくない」と言い続けても、心の中で守り続けてきた親を奪われる恐怖を覚える。
その恐怖と、自らが多大な精神力を注ぎ、親子の絆を守るために犠牲にしてきた、人生の一大事業とも言える努力が潰えた絶望。もしかしたら、利用されていた事に気づいた事によるものかも知れませんが、とても強い反発となって現れる事もあるでしょう。
このことが、すべての悲劇の始まりとなるのです。

そして、ご相談を通じ、この3つの危機的局面において、「アダルトチルドレンの方や、「機能不全家族」との共通した、「家族情動システム」の存在を感じる事が多々ありました。
機能不全家族とは、虐待や心理的な支配など、異常な家族心理で構成された家庭だと簡単に説明しておきます。
「アダルトチルドレン」とは、精神医学上の疾患ではなく、社会的状態、虐待を受けて育った方、機能不全家族の出身者を意味します。

特に、別居の危機の中でも触れたことですが、別居の段階以降、子どもを元の配偶者に逢わせない行為「引き離し」(PA)の事例があります。
「引き離し」家庭で育った子どもの心理的な問題について、現在では、「疾患」としては否定されておりますが、一時期、アメリカの精神科医、ガードナーが提唱した「片親引き離し症候群」(PAS)として、アメリカやドイツでも注目され、裁判でも採用された事があったようです。
ただ、引き離し家庭に限らず、離婚家庭の子ども達が、離婚や別居親に会えないことに苦しむ事例は確かに存在しており、その背後にある、「子に対する親の支配構造」は、機能不全家族の構図、アダルトチルドレンの方が訴える、心理的・対人関係の苦しみと、極めて類似しているというのが、引き離し事例をうかがっての感想です。

3、現時点での見解
最後に、機能不全家族と類似している離婚家庭の支配構造の異常性は、以下の通りです。
子どものいる方の多くが、「親子関係=血縁」と説明し、自らが親である事を理由に子どもの心を縛りながら、離婚と再婚の話になると、途端に配偶者を自分の人生の部品のごとく扱う。
離婚の時に互いに非難をしあう相手は、どちらも子どもの親。
相手を非難する言葉は、そのまま子どもを非難する言葉となって、子どもの心を突き刺し、深く抉ります。
子どもは、その非難を自分の罪として受け止め、監護親に気遣いながら生活をする。
外に向けては、「子どもは大事だ、愛してる」と言いながら、面会交流になると、「離婚に応じないと、養育費を支払わないと、婚姻費用を支払わないと」と、「自分の気持ち、自分の都合」を優先する。
子どもにとって、これほどの身勝手で理不尽な仕打ちはありません。

近年の「引き離し」の事案をうかがい、機能不全家族との共通した家族情動システムが見える事があるというのは、前述したとおりです。
家族情動システムは、その方のご実家のものを近いものになることは、「虐待の連鎖」などの見解から想像できます。
たとえば、「実家から子どもを連れて帰ってくるように言われた」という形で、引き離しが始まる事例もあるとの事で、 「引き離し」というものを、単なる夫婦間、個人の問題として捉えるべきではないというのが、当研究所の現在の見解です。


2013年3月13日 著作物です。無断転用は禁止します。 さとうかずや(さとう社会問題研究所)


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