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さとう社会・心理研究所コラム


【開業11年目のご挨拶】苦しみを特殊なものとしてはならない


みなさん、ごきげんよう。

本年は年始のご挨拶もできませんでした。

そんな開業11年目ではありますが、これからもよろしくお願いいたします。


11年前、さとう社会問題研究所を開業した大きな理由が「虐待と貧困の根絶」です。

最近、「高齢者だけ給付」に疑問符が付き、先日も「困窮者だけ給付」の話が上がっていると報道がありました。

わたくしが疑問なのは、「困窮者への給付」ではなく「困窮者だけ給付」である事です。

本稿では、この点について、これまでの研究を踏まえた意見を述べ、開業11年目のご挨拶とします。


1、困窮者への給付は一律給付でなければならない

わたくしは、どうして「困窮者(だけ)給付」なのか?という点を疑問視しております。

恐らく、ここに日本の福祉や支援の問題があるからです。

福祉や支援の対象を「困窮者」などと限局してしまう事で、本来とは真逆の意味での既得権益になってしまっている。

特に、対象者を限局する政策の場合、その定義や基準も明確にする必要があります。

そのため、本来給付を必要とする多くの困窮者が定義や基準から漏れた事を理由に公然と給付を受けられなくなってしまう。

さとう社会・心理研究所では開業当初から「社会制度的無理解」と定義していた問題です。


2、政治的分断が社会問題の解決を阻害している

当時は指摘できていなかったものの、給付を受けられた困窮者と受けられなかった困窮者との間で政治的分断が発生する事になります。

政治屋や官僚にとっては給付を受けられた困窮者に責任を押し付けることができる。

自己責任論などはその最たるものでしょう。

研究所の開業当初から指摘していた「苦しみに対する無理解」「社会制度的無理解」とは、この自己責任論に集約されるからです。

日本では生活保護制度やその受給者を悪とする風潮があります。

これも、本来、生活保護を必要とする8割の方が受給できていないと言われている事に根本的な理由があるかと考えております。


3、福祉や支援、給付制度を一般的なものとする

わたくしが困窮者給付こそ一律で行うべきだと考える理由は、この「社会的分断の防止」と、福祉や支援、給付制度を一般的なものとするためです。

この分断の原因は、特定の人だけのための福祉であり支援、給付制度である点だと考えております。

「歪み」と言えば分かりやすいかも知れません。

歪みを感じるから違和感を覚え反対する。これが「苦しみに対する無理解」の一側面です。


4、そもそも、福祉や支援は誰が受けても良いものと考えなければ足の引っ張り合いになる

そもそも、福祉や支援は誰が受けても良いものだと考えた方が良いと考えております。

困窮者やら障碍者など、社会的レッテルと言いますか、特殊性が「苦しみに対する無理解」を生んでいるからです。

特殊性とは「自分には関係がない」という認識の事です。

そして、先に挙げた違和感とは、「自分が排除されている」という認識です。

自分も苦しんでいるのに排除されている、これは「社会制度的無理解」です。

そのため、他人の金の話なのに反対の声となってしまう。

妬みと混同してしまうかも知れませんが、妬みとの違いは具体的な根拠や確信に基づいているという点です。

つまり、「苦しみに対する無理解」と「社会制度的無理解」とは、支援者との問題という側面と、社会的分断による当事者同士の問題という2つの側面があるという事です。


5、苦しみを特殊なものとしてはいけない

もちろん、政策、制度である以上、基準や定義は必要です。

ただ、社会給付などは、誰かが受けた事で誰かが損をするものでもありません。

そういう前提で意見を述べている多々見かけますが、たとえば、生活保護費を引き下げて、あなたのお金は幾ら増えますか?給料は幾ら増えますか?です。

どうせ社会保障費は増える一方なのですから、全員で受け取れた方がそ分配も公平なものとなります。

そもそも社会保障制度って、そういうものでしょう?

そして、先の通り、苦しみを特殊なものとしてはいけない。

苦しみや不孝を特殊なものという前提で制度を作り、社会を方向づけた事に日本の社会保障制度の間違いがあったと考えております。


6、本稿最後に

貧困に限らず人が不幸になる原因は様々です。

そして、不幸な人を罵倒してもあなたが幸福になれる訳でもなく、貧困者を叩きのめしても、あなたのお金は増えはしない。

それより、貧困者の既得権益などと思わせている制度設計の方が余程問題だと思います。



2022年4月14日 著作物です。無断転用は禁止します。 さとう院さとう(さとう社会・心理研究所)



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