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さとう社会問題研究所コラム

さとう社会問題研究所では、離婚やDV、その他の社会問題など、法律や裁判に関係するお悩みをうかがう事もあります。

もちろん、私は、弁護士など法律の専門家ではないため、法律相談を受ける事はないのですが、一応、法律学専攻でしたので、法律に関する一般的なご説明などはさせていただく事があります。

今回は、少し予定を変更し、請願法について説明してみます。
2015年1月20日に提出した請願書を巡り、提出先である青森家庭裁判所十和田支部から請願人でもない依頼者の代理人弁護士に対し請願人の個人情報の提供、および、「裁判所のやり方に口を挟む内容」と請願の依頼者が代理人から叱責を受けたという事件があった事。
それと、当研究所の提出する請願書について、幾つかご指摘をいただいた事もあり、「請願」について、改めてご説明しようと考えました。

そのため、こちらでは、可能な限り簡単に法律の説明をしてみようという試みようと考えています。
なお、私は、実務の事は分かりません。
あくまで、学問の範囲で簡単な説明を試み、専門的な書物の理解を助ける目的の物ですので、細かい点の説明不足にはお目こぼし頂ければと思います。


さて、この請願法の解説に入る前に、当研究所の請願について、「提出先に認めてもらわなければ請願書として成立しないのではないか?」というお声をいただきました。

請願法については、「裁判所による面会交流制度の運用を監視する会」の同志である闘う主婦!さんと、それこそ、会の活動を始める以前、2012年の東京出張の際、法務大臣と東京家庭裁判所立川支部に請願書を提出する際から何度も検討を重ねてきました。

そのため、請願書としての有効性を疑うお声に対しては、 恐らくは、認識の違いでしょうが、あれは請願書として成立しているものだとお答えします。

まず、「認められて始めて請願書になる」という事ですが、地方自治法の直接請求と誤解をなさっているのだと思います。

直接請求とは、条例の制定改廃、事務監査請求、市長などの解職や地方議会の解散請求など、地方自治体に定めがあります。
たとえば、条例の制定改廃でしたら、「有権者の50分の1以上の署名が必要で、首長に請求し、首長は20日以内に議会を招集し、結果を報告する」と対応が定められています。
この対応は請求先の義務になります。

そのため、直接請求でしたら、署名数や署名者の有効性など、一定の審査の上、「直接請求が成立している事」を提出先に認めてもらう必要があります。

対して、私のは「請願」です。

意見を書いて送っているだけですし、特に、何かを要求する事もないです。
もちろん、気に入らなければ無視すれば良いだけです。

それが請願です。


前置きが長くなりましたが、請願法の説明に入ります。
さて、この法律は、基本的人権の一つである「請願権」を定めた日本国憲法第16条に基づき定められた法律です。
ちなみに、施行の日も日本国憲法と同じで、日本国憲法と同様、改正された事もないようです。

日本国憲法 第3章 国民の権利及び義務

第16条  何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。

と定められています。

「何人も」とありますので、請願権は、日本国民だけではなく、外国人にも認められている基本的人権です。

請願できる内容は、いろいろ書いてありますが、「請願してはならない内容」は定められていません。

裁判に関する請願が認められるかという点には、肯定否定の両説があります。

ただし、「裁判所に請願をしてはならない」という法律は存在していません。
また、民主と法治と立憲主義に信仰の対象に過ぎない神は必要ありません。
裁判官も人であり公務員である以上、裁判所だけが主権者である国民の声を受け付けないというのは、民主と法治に例外を置き、国家の主権と立憲君主の上に自らを法治の神として据え置く事。
すなわち、思い上がりの産物に他ならないと考えています。


請願法は、請願について一般的な事項を定めただけの法律なので、条文は以下の6つだけです。

第1条  請願については、別に法律の定める場合を除いては、この法律の定めるところによる。

地方自治法と国会法には、別に請願に関する定めがあります。
私も、かつて、国会に対する請願を検討した事があったのですが、政治屋との関わりがないため、断念をした経緯があります。

第2条  請願は、請願者の氏名(法人の場合はその名称)及び住所(住所のない場合は居所)を記載し、文書でこれをしなければならない。

請願の要件は、「名前」と「住所」を書いて、「紙で行う」だけです。

「認めてもらわなければ請願書にならない」というのは、国民が意見を書いて提出するだけの文書に役所のお許しが必要と言うことです。
と言う事は、気に入らない請願は拒否できるという意味でもありますので、お上意識が高すぎるでしょう。

第3条  請願書は、請願の事項を所管する官公署にこれを提出しなければならない。天皇に対する請願書は、内閣にこれを提出しなければならない。
○2 請願の事項を所管する官公署が明らかでないときは、請願書は、これを内閣に提出することができる。


請願書は、その案件を担当する役所に提出する事。ただし、天皇陛下さまに対する請願は、内閣が代わりに受け付けています。
担当者や提出先が分からない場合でも行政権の最高責任者である内閣で受け付けます。

第四条  請願書が誤つて前条に規定する官公署以外の官公署に提出されたときは、その官公署は、請願者に正当な官公署を指示し、又は正当な官公署にその請願書を送付しなければならない。

請願の提出先を間違っている場合、提出された役所は、請願者に適正な提出先を指示するか、請願者の代わりに、適切な提出先に送らなければなりません。
提出先を間違っている事を理由に請願を拒絶する事もできないという事です。
これには、たらい回しを防ぐ意味もあります。

第五条  この法律に適合する請願は、官公署において、これを受理し誠実に処理しなければならない。

そして、この法律の定めに反していない請願書は、役所は受理をした上で誠実に対応をしなければなりません。

この「受理」とは、行政法学でいう所の準法律的行政行為であり、行政庁の裁量を許さないものです。
つまり、名前と住所が紙に書いてあり、請願内容を担当する役所は、提出された請願書は受理しなければならず拒絶はできないです。

本来でしたら、この受理は、事実行為に過ぎないですが、請願法では、受理により、「誠実に処理しなければならない」と法律効果の発生が定められています。

青森家庭裁判所十和田支部の場合は、依頼人ではない当事者の弁護士に「裁判所のやり方に口を挟んだ」として、請願人の個人情報を提供し、依頼者に叱責をする事で、自らの結論操作とそのための一方当事者の発言の大幅な不記載を「裁判所のやり方」と正当化し、請願人を間接的に攻撃する事で、今後の請願活動に政治的な抑圧を加えるのが「誠実な対応」という事になります。

第六条  何人も、請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。

これは、憲法16条を確認したものです。
請願については、あまり裁判で争われる事もないのですが、これについては地方裁判所の判例があります。

判例・岐阜地裁平成22年11月10日判決  何人も、請願をしたためにいかなる差別待遇も受けないが、それには、請願を実質的に委縮させるような圧力を加えることも許されないとの趣旨が当然に含まれる。(判時2100−119)

この判例から、青森家庭裁判所十和田支部による、今回の対応は、「請願を実質的に委縮させるような圧力」と解しています。


もちろん、今回の事を理由に当研究所が裁判所に遠慮する事は一切ないです。


2015年2月1日 著作物です。無断転用は禁止します。 さとうかずや(さとう社会問題研究所)



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