さとう社会問題研究所は、2012年4月17日の東京出張の際、法務大臣に対し、代表者と会員の名において、以下の内容の請願を行いました。
受け取ってくださったのは、法務省庶務係とのことです。


請願事項:
 近年、社会問題化している離婚裁判を有利に進めるための、DV事実の捏造行為および子の連れ去りについて、早期解決を図るよう、以下のように請願いたします。

一、 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(以下、DV法)の改正。
1、DV法の前文、「配偶者からの暴力の被害者は、多くの場合女性であり」の削除。
2、DV法の前文、「女性に対する暴力を根絶しようと努めている国際社会」を「すべての暴力の根絶に努めようとしている国際社会」に改める。
 3、DV冤罪防止のため、保護命令発令後の事実認定の継続手続の法定。
 4、「男性」に対する相談機関の設置。
二、民法の改正
 5、民法819条1項と2項の削除。
 6、離婚後の共同親権の法定。
三、面会交流法の制定
 7、離婚後の面会交流を法律で保障すること。
 8、「連れ去り」を刑事罰の対象とすること。

請願理由:
1、 DV法の前文、「配偶者からの暴力の被害者は、多くの場合女性であり」の削除。

 これは、DV法に重大な予断を持たせる言葉であり、削除すべきである。
 内閣府「男女間における暴力に関する調査」(平成20年)によると、女性の33.2%、男性の17.7%がDV被害の経験があるという調査結果である。これにより、「女性の3人に1人がDV被害を経験している」という言い方がなされているが、同時に、DV被害者全体に占める男性の割合が、34.8%であることも示している。
 政府の責任でもって、DV法の被害と女性を安易に結びつけるような予断を是正すべきである。

2、DV法の前文、「女性に対する暴力を根絶しようと努めている国際社会」を「すべての暴力の根絶に努めようとしている国際社会」に改める。

 根絶すべき暴力の対象を女性に限る必要はない。これは、極めて重大な予断である。また、これらの予断に基づき男性へのDV対策が遅れ、さらに、虚偽のDVの訴え、DVの捏造行為を誘発している恐れもある。

3、DV冤罪防止のため、保護命令発令後の事実認定の継続手続の法定。

 近年、離婚訴訟や親権者の選定を有利に進めるため、一方的にDV被害を訴え、加害者とされる方が知らない間に配偶者だけでなく子供まで連れて行方をくらましてしまう事例について相談を受けている。
 DV法の保護命令は加害者とされる人物に対する事実認定を通じて確定された事実でもなく、あくまで、「緊急性を重視しただけの手続」に過ぎない。
 最近、DVの訴えで加害者とされた人物に対し、福祉を担当する市役所の職員や警察官が、あたかも、確定された犯罪者のごとく対応しているという相談も受けている。警察官に「あなたは加害者だ」と暴言を吐かれたという男性もいる。
 市役所としてはDV被害者の保護という社会正義に従事しているつもりかも知れないが、近年、刑事事件でも度々起こっている冤罪、しかも、事実認定の手続を経ないで行われた緊急措置に対し、あたかも、確定された事実に対するがごとき対応で、公務員が同じ市民を犯罪者扱いしているとすれば、そこに社会正義はなく重大な差別である。
 また、一警察官が市民に対し訴訟手続を経ないで加害事実の認定行為を行ったことは、法に存在しない警察権の濫用であり、重大な懲戒理由に該当する。
 一方的な被害の訴えだけで社会的に排除されるということは、重大な人権侵害であり、これを許す現行DV法は、ただちに改正されなければならない。

4、「男性」に対する相談機関の設置。

平成23年7月11日の内閣府男女共同参画局「配偶者暴力相談支援センターにおける配偶者からの暴力が関係する相談件数等の結果について」によると、DV被害に対する男性の相談件数が1%にも満たないとされている。
前述の内閣府「男女間における暴力に関する調査」(平成20年)によれば、DV被害のある男性の割合は17.7%であり、DV被害全体の34.8%になっているのに、相談件数の少なさは異常である。
その原因の1つとして、相談施設が、婦人相談所、女性センター、児童相談所など、相談資格に予断を与えるような名称が多く、「男性を対象としている施設」という印象を与えるものが設置されていないからではないか?DV被害を訴える男性に、「男性であってもDV被害を訴えて良い」という社会的メッセージを送れるような施設の設置及び予断を持って接しない相談員の配置を希望する。

5、民法819条1項と2項の削除。

民法819条では、離婚後の単独親権を定めているが、離婚訴訟が泥沼になるのも、親権についての争いであることが多い。
また、親権者選定において裁判所は、母親を重視する傾向があり、母親の親権獲得率が有意に高いとされている。しかしながら、「子の福祉と母親」に単純な関係はない。心理学でも、「養育者との愛着が子の発育には必要」という趣旨の言葉が並ぶ、これは、「子供は母親と共にあることが一番」という極めて単純な関係とは限らないことを意味している。そして、最近でも判決があった子の虐待死事件においても、親権者は母親であった。もちろん、これについては、「母親の社会的孤立」という問題があるが、少なくとも、「母親有利の親権者選定」は、判例を通じた、単なる裁判官のジェンダー・バイアスに過ぎないと考える。バイアスは、裁判官が従うべき法と良心とは無関係であって、裁判の公平を大きく損なうものであり、その判断に不適切な影響を与えている。
さらに、法務省では、政務官が国会答弁において、「離婚後の面会交流は重要」と述べていながら未だに、親権を理由とした面会交流拒否の実態があり、親権を獲得できなかった親が、子に逢えず自殺をするという事例もあるとされている。これは、単独親権制度が及ぼした害悪である。
単独親権制度では、離婚を理由に国家が法を盾に子供から片親を奪い去る権利として機能していることは重大な問題である。そもそも、離婚後に考慮すべき「福祉」とは子に対する充実した監護である。現在の離婚裁判は、子の福祉にとって最大の害悪と化している。

6、離婚後の共同親権の法定。

そもそも、離婚裁判の際、子の連れ去りや虚偽のDVの訴えが誘発される背景として、離婚後に片親が親権を喪失するという事に起因している。子供を奪われたくない片親が、子供を実力で奪い去り、家庭裁判所が、連れ去った誘拐犯を「継続的に」などの占有権と類似の生体財産権として子を扱い、連れ去りを、正当化し容認しているためである。
言うまでもないことだが、子供は物ではなく、財産権でもない。日本国憲法に定められた主権者の一部であり、人権の享有主体である。
現在、単独親権制度は、離婚を通じた親子の離縁の制度として機能している。本来、離婚制度と親子の断絶は別制度である。離婚後の共同親権制度を導入し、この事を明らかにする必要がある。

7、離婚後の面会交流を法律で保障すること。

 平成24年4月から民法766条1項が改正され、「面会及びその他の交流」という言葉が追加されるという事で、多くの連れ去り被害者、DV冤罪被害者は、大きな期待を抱いておられる。
 しかし、年3回の写真送付を「面会」といい、国会答弁などでの連れ去りを不適切と言ってみても、誘拐や拉致事件を違法でないと言ってのけ、司法権の独立を盾に社会正義と法の秩序を歪めるような家庭裁判所が、態度を改めるとは信じられない。
 これまで、家庭裁判所は別居親を「赤の他人」として扱っているような事例が多く、法や司法権と称し、社会的に受け入れられない審判を行ってきた。離婚制度は、夫婦の離縁制度であり、子供との離縁制度ではない。現在の裁判官は、離婚制度の基本的なところから理解できていないと想われる。
 そのため、裁判官に間違いを起こさせないよう、離婚後も親権を喪失せず、面会交流拒否などに対しては、親権に基づく訴えにより、別居親と子の間の親子関係を法が保障する必要がある。
 そのため、法律で、「親子の権利」として、法や権力では親子の絆を断ち切ることが出来ない権利にすること(離婚後でも別居親と同居親の親権は同一であること)。
 さらに、面会交流について、「別居親と子どもが、同じ場所、同じ部屋で、互いの容姿を確認し、音声で会話でき、体の接触の可能な距離を確保した上で行うこと」など、明確な定義付を行い、裁判所による勝手な解釈、非常識極まる面会交流を想像できなくすること、連れ去り・引き離し・面会交流拒否を「子の福祉と社会に対する重大な害悪」と定め、違法化。連れ去り・面会交流拒否は監護権の喪失理由にすることが必要である。

8、「連れ去り」を刑事罰の対象とすること。

 近年の「連れ去り」事例は、離婚の際に親権獲得を有利にするためとされている。法務省では、この行為を政務官が「不適切」と平成17年に国会答弁をしておきながら、未だに連れ去り事案は多く、家庭裁判所の審判では、先月も、裏口から家に侵入し、子の面倒を見ていた祖母から子供を奪って抱えて走った連れ去り事案について、「連れ去りは違法行為ではなく、連れ去り被害者は精神的苦痛を感じていない」などと判決があった。
 しかも、この事案では、連れ去った際に、「弁護士が親権に有利になる」と、連れ去りを指示されたと母親が言い残したとうかがっている。
 この事例では、連れ去った妻を告発したと当事者の方からうかがっている。
 この誘拐事件の告発についても、警察が告発の受理を拒み、公安委員会や県警察本部に何度も苦情申し立てを行ったとの事、「連れ去り」というものに対し、国として政府として、真剣に取り組んでいないことの現われではないか?
 そもそも、一方的にDVの被害を訴えれば、警察や市役所などの公務員は犯罪者として冤罪被害者に対応し、DV被害を訴えた者の犯罪行為に家庭裁判所が墨付きを与えることは、極めて不公平な行政権や司法権の行使であり、国家として虚偽のDVの訴えやDV冤罪に大きく加功している。
 裏口から家に侵入し、子供を抱えて走り去る行為が違法行為でないのなら、刑法244条(未成年者略取及び誘拐)は違法でなくなるし、我が国が国家的・国民的に取り組んでいる朝鮮民主主義人民共和国による、いわゆる「拉致事件」も違法でないと言うことになる。少なくとも、家庭裁判所では誘拐や拉致事件は違法行為ではなく、被害者家族の精神的苦痛は認められないことになる。
 家庭裁判所が何者であったとしても、「連れ去りに違法性が無い」などとは認められない。
 連れ去りこそが、子の福祉にとって有害な行為であることを裁判所に認識させるためにも、連れ去りの違法化が必要である。
 そのため、離婚を有利に勧めるため、虚偽のDVや虐待の被害を訴えた者を罰するための規定。子供を連れ去った者、虚偽の訴えや連れ去りが離婚裁判に有利になると教唆した者、裁判調書において連れ去りやDVに関し虚偽の記載をした家裁調査官、連れ去りを違法と認定せず、正当化した裁判官を、「連れ去りを行った犯罪者」として制裁を加えられる法制度が必要である。
 なお、裁判官の職権の独立や身分保障などを定めた憲法の規定は、裁判官による犯罪行為を容認するという規定ではないため、この法制度は憲法違反にはならない。

以上


原文にあった誤字は修正しております。

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〈参考〉
10月29日,2010年(平成22年)の衆議院法務委員会で黒岩宇洋政務官から政府答弁がでました。
○黒岩宇洋政務官 「子どもの連れ去りについては、(実際に法律に明記するかは別にして、)一方の親が他方の親の同意を得ずに子を連れ去ることは適切でないとの認識をしています。このような?場合はやはり夫婦間で子について話し合いがなされるべきと考えております。」
国会答弁

裁判年月日 平成17年12月06日 最高裁判所第二小法廷 決定、刑集 第59巻10号1901頁
判示事項 母の監護下にある2歳の子を別居中の共同親権者である父が有形力を用いて連れ去った略取行為につき違法性が阻却されないとされた事例
裁判要旨 母の監護下にある2歳の子を有形力を用いて連れ去った略取行為は, 別居中の共同親権者である父が行ったとしても,監護養育上それが現に必要とされるような特段の事情が認められず,行為態様が粗暴で強引なものであるなど判示の事情の下では,違法性が阻却されるものではない。(補足意見及び反対意見がある。)
参照法条 刑法35条,刑法224条,民法818条,民法820条


さとう社会問題研究所「請願書」