さとう社会問題研究所は、2015年2月20日、北海道釧路総合振興局社会福祉課に対し、以下の内容の請願を行いました。
請願は郵送の形式によって行いました。

請願解説:

今回は、当研究所初のDV防止法の支援措置に関する請願書です。
申請者は、当研究所のクライアントであり、DV被害に関して心理コンサルティング、カウンセリングを半年ほど行ってきました。

DV防止法による被害者保護や支援の現状には多くの問題があります。

まず、公的な支援でもあるため、その内容が一律的に過ぎる事です。
今回の請願でも記していますが、虐待には、主に3つの基本的な方法があり、被害の現れ方も、それぞれ大きく異なっているにもかかわらず、その特徴を踏まえないままの一律な支援は、むしろ、被害者の自立を妨げる事になると考えています。

次に、一方的に加害者として訴えられた方に対する司法や行政からの被害者保護を名目とした人権侵害の問題もあります。

最後に、それ以上に、DVの解決に対し、安易に離婚や別居を前提とされている現実があります。

離婚や別居は単に夫婦の問題に止まるものではなく、その間にいる子供は片親を捨てさせられる、または、親を奪われる事により、心が引き裂かれ、将来の結婚観や家族間にまで深刻な影響を受ける事になります。

もちろん、これは、「DV被害者保護」という、素晴らしい名目で行われている事でもあり、中には、「連れ去り引き離し」「片親疎外」や「居所不明児」のように報道でも取り上げられている社会問題もあります。

私は、今回に限らず、DV被害者の支援を行っていますが、加害者とされた方からの依頼もあり、支援をさせていただいています。
そのため、これまで、当研究所で受けて来たDV被害者や加害者とされた方に対する心理コンサルティングやハラスメント防止教育でのご相談でのやり取りを踏まえ、ご意見をさせていただきました。


請願書


請願事項:

私、○○○は、北海道釧路総合振興局に対し、日本国憲法第16条と請願法に基づき、○○○○○さんに対する配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(以下、DV防止法)に基づく支援に付き、○○さんの状況を充分に考慮した上でのご対応いただけるよう、強く希望いたします。

請願趣旨:

 私は、DV被害者だけではなく、疾患など、さまざまな理由によりDV加害者として訴えられている方に対してもカウンセリングや助言をさせていただいている者です。
 今回は、2014年8月から私がカウンセリングをさせていただいている○○○○○さんが、御庁に対しDV防止法による支援措置を申請したいとの事で、僭越ながら私からも、○○○○○さんの事情に即したご支援をいただける様、申し入れをさせていただきます。

請願理由:

一、経済的DV被害の特性を踏まえた上での支援が必要であること

 ○○○○○さんの受けているDV被害は経済的DVによるものです。
経済的DVとは、経済的な優位を利用し、配偶者を生活面から支配するDVで、その苦痛は精神的DV、モラルハラスメントと同質のものです。

 また、経済面の優位性を活かし、精神的な苦痛により支配するDVでもあるため、暴力が見られない場合もあり、その被害が外見にも表れず、深刻な苦痛や被害であっても理解されない事も少なくありません。

 ○○さんのご家庭では、夫は収入から自分の取り分を一方的に除いた残りが家計に入れるとの事ですが、その取り分が収入に比して多く、共働きでご自身にも、わずかながらの収入ある○○さんの分と合わせても、必要な生活費には足りないとの事です。

 また、夫は、○○さんの態度などが気に入らないと、「経済制裁」として、一方的に家計への支出を少なくしてしまう事もあるとの事です。
 その上、自分の取り分は、糖尿病の診断を受けながらも、過剰な飲酒と子供たちへのお菓子などに浪費されるとの事で、家庭と親子関係の機能不全家族化の元となりました。

この「家庭と親子関係の機能不全家族化」とは、父親と子供たちとの関係が、暴言とお菓子による精神的支配、支配従属関係に基づいているという事です。

 そのため、○○○○○さんは、2014年8月ごろから、私の助言もあり、夫によるDVから逃れるため、2015年3月ごろには家を出て自立した形での避難ができるよう、家計簿を用いての遣り繰りで準備金を蓄える半年計画を立て、ご家庭の維持に努めながらも計画を実行に移してきました。

 しかしながら、その間も、夫の振る舞いに改善が見られず、また、2015年に入ってからは、その横暴な振る舞いに拍車がかかるようになり、その中で、わずかに蓄えた自立のための資金も使い果たしてしまったという事で、家庭の維持を諦め、DV防止法に基づく支援を受けての自立を目指したいとの事です。

 ○○○○○さんの場合に限らず、経済的DVの困難は、何よりも家を出て自立を目指す際、その原資の確保が極めて困難である事が多いです。
これは、他のDV被害と異なり、支援措置の際、行政や警察の支援の下、内閣府男女共同参画局の説明に反し、相手の通帳や車まで、根こそぎ家から持ち去り、相手を経済的困難に追い込むDV関連被害として知られる「持ち去り」ができないという事でもあります。

 そのため、経済的DV被害者の自立のためには、どうしても行政による経済的なご支援が必要だと申し上げます。


二、子供たちの両親の間で不安定な心理にも配慮が必要であること

 DVのある家庭では、夫婦だけではなく、お子さんがいる事も少なくありません。
 仮に、DV防止法による支援の対象者が被害者である夫婦の一方であったとしても、その支援のために子供を蔑ろにして良いという事を意味すると解されてはならないと、私は訴え続けています。

 先述の通り、○○○○○さんに対する支援には、3人のお子さんの心情に対する配慮も必要です。
 子供たちの父親である夫は、○○さんには必要な生活費も支出しない経済的DVをしながら、子供たちには、時に暴言を、時にお菓子を使い分け、精神的に支配してきたとうかがっています。

 そのため、○○○○○さんによると、お子さんたちの○○さんと夫に対する態度も、時により気分により大きく異なり、○○さんは、酷い暴言を投げかけられる事もあるとの事です。

 これは、日常的な家庭内のストレスによるものが大きいと思いますが、家庭内は、長年の機能不全状態にあったため、お子さんたちも極めて不安定な心理状態が継続的に続いているものと思われます。

 その中で、長男は、高校卒業や成人を控えながら、今は自立を目指す身でもあり、言い換えるなら、自立が叶った際には、ご自身で道を選ぶこともできると思います。

 対して、次男と長女は、次男が高校進学、長女が中学生と言う事もあり、充分な配慮が必要だと思われます。
 しかしながら、次男と長女は、ただ父親から引き離せば良いのか、と言われれば、それも危険な事だと考えます。

 特に、父親による暴言などの被害も受けていて、時に○○さんに暴言を吐くものの、それは、極めて不安定な状態故の事です。
加えて、長女は、○○さんが過去に家を出ようとした際にも、校区の変更を気にしていて、○○さんに同行できないと言っていたそうです。

 思春期は子供が親から自立する準備を始める時期でもあるため、この時期の子供の対人関係では、友人関係が親子関係に比して重要になってきます。
 いかなる事情があっても、親の勝手による校区の変更による友人との別れは、思春期の子供の心理に悪影響を与えるリスクがある事を常に考慮する必要があります。

 そのため、○○○○○さんも、過去に家を出ようとする度に、お子さんたちの反対で諦めて来たという経緯があります。

 私の方で相談を受けた睡眠時無呼吸症候群、レム睡眠行動障害によるDVの事例でも、嫌がる娘さんが母親に強制的に転校をさせられた後、不登校となってしまい、児童相談所が介入するところまで話が進んでいたという話もあります。
 この娘さんも、○○さんの長女と近い年齢のため、思春期特有の心理状態に加え、機能不全家族内での精神的な苦痛による不安定さは、本人の意図しない急激な環境の変化に対しても、悪い心理的影響を及ぼすと考えるべきで、これは子供の我儘ではありません。むしろ、機能不全家族であっても、長女が充分に尊重される形での被害者の保護が必要だという事を申し述べさせていただきます。

 また、次男は、アスペルガー障害との事ですが、父親には、発達障害に対する理解がなく、障害による生活上のご不便を、すべて本人の欠点と捉えて叱責するのみとの事です。
 アスペルガー障害の方は、コミュニケーションそのものには問題ない代わりに、比喩的な表現を上手く理解できない、自分の言葉で何が起こるかを事前に予測して考慮した対応ができないなど、生活上の不便もあります。
それがため、父親との会話の中では、「言わなくても良い事」や「言わない方が良い事」まで言ってしまい、○○さんが夫から、更なる暴言を浴びせられるような事も度々あったとの事です。

 ただ、次男も、単純に父親から引き離せば良いかと言われれば、その環境の急激な変化に上手く対応できるか、過去にも、○○さんと共に家を出る事にも反対だったとの事で、高校進学を控えている事もあり、その刺激が悪い方に向いた時には極めて危険だと言わざるを得ません。
 そのため、可能な限りは、本人にとっても安心できる形での○○さんの避難先への移住が望ましいと思われます。


三、離婚や遠方への移住を支援の前提とする事の問題

 これは、DVに対する現在の一般的な対応により発生した別の社会問題です。
今後のための参考としていただければと思い、あくまで、私の相談業務を通じた上での知る限りの事ではありますが、ご説明させていただきます。

これまでの通り、経済的なDVの場合、被害者がその精神的な苦痛から逃れるために避難する時点では、どうしても経済的な支援が必要となります。

 しかしながら、DV防止法による支援措置の前提として、離婚や遠方への移住を前提とし、また、加害者との交渉を持たない形を取る事も、一律的な支援の在り方として望ましいかと言う問題があります。

 先の通り、子供がいる場合などでは、離婚や別居の際、子供は本人の意思に関わらず片親を捨てる事を余儀なくされます。
 夫婦の不和や家庭内の雰囲気から、薄々、それを理解できていても、大人の都合でその選択を迫られ、将来の結婚観にまで影響を及ぼすほどの精神的苦痛を受ける事になる。それを親不孝やら子供の心の弱さと切り捨てるべきではないと訴え続けています。

 また、DVの事案で加害者とされる方の現状も理解される事が必要だと考えます。

 一般的に、DVで訴えられる方は、自分がDVをしているという自覚もなく、指摘された行為も「躾」や「教育」「制裁」などと、その内面で合理化されている事が多いです。
 その上、現在のDV防止法の支援措置では、自治体や警察、裁判所が、加害者の言い分にまったく耳を傾けず、一方的な支援措置により反射的に社会的排除を受けてしまう。
それにより、強いストレス状態に陥り、被害意識を持ち、その行為の合理化がエスカレートしてしまうという事も少なくありません。

 DV被害者も、多くの場合が加害者との共依存関係にあるため、下手に交渉を持てばよりを戻して加害者の元に戻ってしまうという危険がある反面、DV防止法の支援措置の一方的な部分、つまりは、訴える側には十分な立証が必要ではなく、反対に、訴えられた相手には十分な反論の機会すら与えず、その言葉を聞き入れる事もなく、行政や司法が被害者保護の名目で徹底的に社会的排除を加えるという側面を悪用する事による社会問題、でっち上げDVやDV冤罪も多々見られます。

 同様に、DV防止法の支援措置を理由に、事の真偽にかかわらず、警察が保護する形で被害を訴えた片親の元に子供を移動させ、離婚や別居の後も子供を相手に逢わせない、「連れ去り引き離し」または、子供の心理に悪影響を及ぼすまで別居親の悪口を吹き込む洗脳虐待、「片親疎外」「離婚や別居による機能不全家族化」と呼ばれる問題も発生しています。

 また、先述した通り、睡眠時無呼吸やレム睡眠行動障害、更年期障害など、治療をすれば治まる可能性の高い「DV」もあり、近年でも、「夫源病・婦源病」として、知られるようになってきています。
 しかしながら、そのような病気の患者さんであっても、DV防止法の支援措置では行政と司法が一体となり過剰な社会的排除を加えるという、通常ならばイジメや差別とされるような行為でさえもDV防止法では被害者保護として許されている現状があります。

 このように、「DVの当事者は接触させるべきではない」という問題解消の前提を強く意識しすぎる事で、本来なら、適切な第三者の介入により、その元となっている疾患の治療や話し合いでも解決できる場合まで、問題を複雑化させているケースは少なくないです。

 特にこれらの事例でも、被害者保護を重視するあまり、間違った保護の場合、損害賠償請求などの形での解決が可能と、極めて安易に捉えられている側面もありますが、現実には、社会的排除による精神的苦痛は、刑事事件の冤罪と類似のものです。
しかしながら、これらの被害は、DV被害者保護の下、極めて過小に評価されています。
 また、一度開始された支援措置や保護命令は、それが間違いであった場合でも、訴える先がない。特に、警察や裁判所に訴える場合でも、元々、支援措置や保護命令に関わった機関でもあるため、自らの過ちを後に認めることはなく、私がご相談を受けている極めて悪質な虚偽のDV事実で訴えられていたと後の裁判で判明したというケースでも、訴えられた被害者は愛知県警察から「全責任は裁判官個人にある」と日本国憲法第17条を無視した、違憲、違法な対応で泣き寝入りを強いられています。

このような理不尽が法の名の下に許されるべきではないですし、このようなDVの防止を阻害し、被害そのものが理解されなくなる乱暴な方法を採らぬよう訴え続けています。

以上


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さとう社会問題研究所「請願書」