さとう社会問題研究所は、2018年10月17日、公明党の古屋範子副代表・女性委員長に対し、陳情書を提出しました。
陳情は公明党本部への郵送と同党所属の地方議員への手渡しによって行いました。

改めて、さとう社会問題研究所は、あらゆる組織団体から独立した営利事業者です。

今回、公明党に対し陳情を行ったのは、さとう社会問題研究所の提案にご賛同下さった、社会問題の支援活動家sobooさんから「ご自身の支持政党に陳情をしたい」というご依頼を受けたためです。

当研究所はご依頼に当たり、クライアントの政治的立場を問う事はありません。
また、今回の陳情を以て、さとう社会問題研究所の政治的立場を表明するものではありません。


請願解説:

さとう社会問題研究所では、裁判所や行政機関に対する請願書も、文章執筆提出業務としてお受けしています。(別料金です)

今回は、国政政党に対する法律改正の陳情書です。
本年(2018年)の初めごろ、社会問題の支援活動家であるsobooさんよりご依頼を受け、半年以上かかりましたが、何とか提出にこぎつける事ができました。

今回のDV防止法改正案は、さとう社会問題研究所が、でっち上げDV・DV冤罪への対策として掲げていた「ハラスメント防止教育」でお話ししていた具体的な対策が基となっています。

本陳情では、まず当研究所にご依頼いただいた事例を基に、DV防止法により引き起こされた社会問題、DV防止の観点からの悪影響などを詳細に説明しています。
その上で、現状のDV被害者支援を阻害しない形で、問題となっている点のみをフォローできる方法という観点からご意見させていただきました。


今回は、さとう社会問題研究所のDV防止法改正案にご賛同し、陳情と言う形で社会に発言する機会を下さった、社会問題の支援活動家sobooさんに、この場で感謝申し上げます。


陳情書


陳情事項:

私、○○○は、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(以下、DV防止法)について、次の点の改正を以下に述べるような形で行っていただける様、陳情いたします。

1、前文
2、第一章と第一章の二、第三章
3、第四章
4、第五章および第六章


陳情の趣旨及び理由:

1、前文について

現行のDV防止法では、「配偶者間の暴力は、個人の尊厳を害し、男女平等の実現の妨げとなっている」と指摘しながら、国による積極的な配偶者間の暴力(以下、DV)の解明や当事者間の和解などの姿勢を示す条文が無く、また、DVが個人の尊厳と男女平等を妨げるものであるにも関わらず、「被害者の多くが女性」とある事に拠り、DVが配偶者間の暴力でありながら、社会的には「加害者は男性、被害者は女性」という固定したイメージを与える表現となっており、実際に、このイメージが原因と思われる出来事がありました。

そのため、前文の第2段落以下を以下のような形での改正を提案いたします。

第2段落の改正案

ところが、配偶者からの暴力は、犯罪となる行為をも含む重大な人権侵害であるにもかかわらず、(加筆:心理的、病理的な原因の解明、当事者間の相互理解を通じた再発や悪化の防止措置など)被害者の救済が必ずしも十分に行われてこなかった。

また、配偶者からの暴力の被害者は、多くの場合、様々な理由から経済的自立が困難であり、子の最善の利益の観点からも配偶者間を含めた家庭の平和を求めており、その被害者に対して配偶者が暴力を加えることは、婚姻における両性の本質的平等だけではなく、子の最善の利益も否定するものである。
(原文:配偶者からの暴力の被害者は、多くの場合女性であり、経済的自立が困難である女性に対して配偶者が暴力を加えることは、個人の尊厳を害し、男女平等の実現の妨げとなっている。)

第3段落

このような状況を改善し、人権の擁護と男女平等の実現を図るためには、配偶者からの暴力を防止し、被害者を保護するための施策を講ずることが必要である。このことは、あらゆる暴力(女性に対する暴力から変更)を根絶しようと努めている国際社会における取組にも沿うものである。

第4段落

ここに、配偶者からの暴力に係る通報、相談、保護、自立支援(加筆:、面会交流)等の体制を整備することにより、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護を図るため、この法律を制定する。


2、第一章と第一章の二、第三章について

DV防止法の施行より15年以上が経過、DVとその被害に対する社会的な認知が広まり理解が深まる中、同時に「DV加害者」に対する社会的な厳しさも定まりつつあります。

これに対し、DV防止法では、「被害者」の定義はあるものの、「加害者」の定義が無く、現状ではDVの相談に行っただけで、その相手方は「加害者」として対応される事になりますが、この事は、DVが社会的に認知され、「加害者」という言葉のイメージに対する世間的な厳しさが増すに比べると、充分に理解されている事ではありません。

その上、裁判で有利になるという理由から、「離婚を考える女性は、とりあえずDV相談に行くべし」と助言なさる方もいらっしゃるとまで言われています。

また、「DV被害者への配慮と支援」を義務付けられた自治体の職員や警察官は、その職責と正義感もあり、加害者とされてしまった他方当事者からは、DV防止法には予定されていなかった、一方的かつ苛烈な対応、制裁的な対応、誤解を恐れず申し上げるなら、「DV被害者支援にかこつけた他方当事者に対する人権侵害行為」を受けたという声も上がりました、

そして、一度、DVで訴えられてしまった方には、その一方的かつ苛烈な対応に対しても、正当に異議を申し立てる方法がなく、2018年4月に発覚した財務省事務次官によるマスメディアの女性記者に対するセクシャルハラスメントの件で、財務大臣が仰った「人権は無しか」という状況が、10年前には存在していました。

他にも、前文により「DV被害者は女性」というイメージが社会的に定着し、既に対応された事ではありますが、男性のDV被害者が相談の場で門前払いを受けた事が問題となった事もあります。

これら、本来のDV防止法の意図に反した使われ方は、多くの男性、特に「DVで訴えられた方たち」からの極めて強い反発を招くだけとなりました。

近年では、「でっち上げDV・虚偽DV」として、報道される事も増えており、裁判でも、DV被害者が、受けた被害を訴えながら、その主張が認められないなど、「DV被害者とDVの存在」にまで社会的な疑いの目が向けられるようになっています。

この様に、DV防止法が本来の趣旨に反して受け止められる「憎しみの法」となり、DVの当事者同士が歩み寄りのできない無用な対立を何年も続けるようになったのは、DV防止法の問題点が明るみになりながら、未だ、国政の場では問題とされる事なく、10年以上にわたり、放置され続けてしまったからだと考えています。

そこで、ここでは、これらに対する批判的な言葉ではなく、これらの問題の原因となった、「DV防止法のあいまいさがもたらした弊害」と「法文の言葉のもたらす社会的なイメージによる弊害」をフォローする形で具体的な改正案を提案させていただきます。


第一章 総則

(定義)

第一条 この法律において「配偶者からの暴力」とは、(加筆:性別を問わず)配偶者からの身体に対する暴力(身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすものをいう。以下同じ。)又はこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動(以下この項及び第二十八条の二において「身体に対する暴力等」と総称する。)をいい、配偶者からの身体に対する暴力等を受けた後に、その者が離婚をし、又はその婚姻が取り消された場合にあっては、当該配偶者であった者から引き続き受ける身体に対する暴力等を含むものとする。

2 ?この法律において「被害者」とは、(加筆:性別を問わず)配偶者からの暴力を受けた者(加筆:又はその被害を相談した者)をいう。

(:条文追加)?この法律において「加害者」とは、配偶者に暴力を振るった者又は前号「被害者」の他方配偶者をいう。

(:条文追加)?この法律において「心身に有害な影響を及ぼす言動」とは、子や配偶者に対する威圧、暴言、侮辱や無視、器物の損壊、意図的に大きな物音を立てる、収入などの経済的優位を利用した威圧、生活費の不支給などによる、家庭内の支配や抑圧を言う。

(:条文追加)4 この法律において「被害者の保護等」とは、被害者の生命身体の安全の確保、加害者や第三者への配偶者への暴力に対する理解への啓発など、配偶者への暴力の解決及び再発防止への取り組みを言う。

5、この法律において「被害者の保護等」には加害者に対する制裁や人権侵害は含まれない。


第一章の二 基本方針及び都道府県基本計画等

(基本方針)

第二条の二 内閣総理大臣、国家公安委員会、法務大臣及び厚生労働大臣(以下この条及び次条第五項において「主務大臣」という。)は、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のための施策に関する基本的な方針(以下この条並びに次条第一項及び第三項において「基本方針」という。)を定めなければならない。

(追加)なお、この基本方針は、被害者及び加害者への配慮を踏まえたものでなければならず、かつ、加害者への制裁となるものを含めてはならない。

2 基本方針においては、次に掲げる事項につき、次条第一項の都道府県基本計画及び同条第三項の市町村基本計画の指針となるべきものを定めるものとする。
一 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する基本的な事項
二 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のための施策の内容に関する事項
三 その他配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のための施策の実施に関する重要事項

(追加)四 加害者からの苦情および異議申し立てに関する事項

(都道府県基本計画等)

第二条の三 都道府県は、基本方針に即して、当該都道府県における配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のための施策の実施に関する基本的な計画(以下この条において「都道府県基本計画」という。)を定めなければならない。

(追加)なお、この都道府県基本計画は、被害者及び加害者への配慮を踏まえたものでなければならず、かつ、加害者への制裁となるものを含めてはならない。

2 都道府県基本計画においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する基本的な方針
二 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のための施策の実施内容に関する事項
三 その他配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のための施策の実施に関する重要事項

(追加)四 加害者からの苦情および異議申し立てに関する事項

3 市町村(特別区を含む。以下同じ。)は、基本方針に即し、かつ、都道府県基本計画を勘案して、当該市町村における配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のための施策の実施に関する基本的な計画(以下この条において「市町村基本計画」という。)を定めるよう努めなければならない。

(追加)なお、この市町村基本計画は、被害者及び加害者への配慮を踏まえたものでなければならず、かつ、加害者への制裁となるものを含めてはならない。


第三章 被害者の保護

(警察官による被害の防止)

第八条 警察官は、通報等により配偶者からの暴力が行われていると認めるときは、警察法(昭和二十九年法律第百六十二号)、警察官職務執行法(昭和二十三年法律第百三十六号)その他の法令の定めるところにより、暴力の制止、被害者の保護その他の配偶者からの暴力による被害の発生を防止するために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

(追加)なお、この措置は被害者及び加害者への配慮を踏まえたものでなければならず、かつ、加害者への制裁となるものであってはならない。

(:条文追加)?警察官は、前項の措置にあたり、加害者に対し、被害者の供述のみに基づいた誓約書を書かせ、または、誓約書を書くまで警察施設内に止まる事を求めてはならない。

(警察察本部長等の援助)

第八条の二 警視総監若しくは道府県警察本部長(道警察本部の所在地を包括する方面を除く方面については、方面本部長。第十五条第三項において同じ。)又は警察署長は、配偶者からの暴力を受けている者から、配偶者からの暴力による被害を自ら防止するための援助を受けたい旨の申出があり、その申出を相当と認めるときは、当該配偶者からの暴力を受けている者に対し、国家公安委員会規則で定めるところにより、当該被害を自ら防止するための措置の教示その他配偶者からの暴力による被害の発生を防止するために必要な援助を行うものとする。

(追加)なお、この援助は、被害者及び加害者への配慮を踏まえたものでなければならず、かつ、加害者への制裁となるものを含めてはならない。

(:条文追加)?警視総監若しくは道府県警察本部長(道警察本部の所在地を包括する方面を除く方面については、方面本部長。第十五条第三項において同じ。)又は警察署長は、前条警察官による被害の防止措置について、加害者から苦情および異議申し立てがあった場合、その内容を調査し、改善及び再発防止のための措置を執らなければならない。


3、第四章について

ここで定められた保護命令は、DV被害者を加害者から守るための具体的かつ非常に強力な措置であり、同時に、相手方、DVで訴えられた方やDV加害者にとっても、心理的、社会的に甚大な影響のある措置でもあります。

その上、被害者を守るため、迅速かつ証明のハードルを低く設けており、一度申立てが行われれば、ほぼ確実に発令されてしまう。

相手方は、審尋こそ行われるものの、良く分からないDVで訴えられた上、一方的な措置が採られる為、実際には「誰にも自分の話を聴いてもらえない状態」と何ら変わるものではない。

これらが相手方に与える心理的な影響は、「いきなり訴えられた混乱」であり、次に「何を言っても法律を盾に取り合ってもらえない悲しさ」であり、最後に「証拠もないのに処分される理不尽への怒り」となってしまう事も多く、TwitterやアメーバブログなどSNSでは、そう言った「理不尽への怨嗟の声」が溢れ、報道される機会は増えたものの、社会的に充分な議論や対策が尽くされたとは言い難い状況にあります。

そして、先述の離婚裁判を有利にするためDV相談に行くという話と共に、離婚裁判を有利にするため、とりあえず保護命令を発令させ、それを「DVの証拠」として、離婚裁判で提出するという話。

その上、まったく別のDVの保護命令の申立てであるにも関わらず、一言一句違わぬ申立が行われたという事案もあったらしく、2012年頃の事ですが、当時のSNSでは、保護命令の申立書にテンプレートが存在しているのではないか?という指摘がありました。

さらには、離婚後の面会交流調停でも、同居親である母親が、「子供と父親を逢わせたく理由」として、DV被害を持ち出す事案があり、中には、離婚裁判では訴状に記しただけで一切の立証活動をしなかったDVの話を、面会交流調停の場で蒸し返した事案もあり、この件について東京家庭裁判所立川支部に対し請願を行っています。


ここで、本当のDV被害者の保護とは何なのか?を改めて考えてみて下さい。

私には、上に取り上げた事が公然とまかり通る所にそれがあるとは思えません。

ここに取り上げた内容は、DV防止法の趣旨に反しており、そもそも、DV防止法にも定めがない。ただの報復であり、法による私刑、「リーガルハラスメント」に外なりません。

こういう事が公然とできてしまう法律のため、DV防止法は先の通り「憎しみの法」となり、本当に暴力を振るわれ苦しみを抱え、DV被害を訴えながら、それを疑われ否定された方からご相談いただく事もあります。


刑事法でさえ加害者にも人権を認めながら、DV防止法では、一度訴えられてしまった人には先述の財務大臣のご発言と同様、「人権がない」とでも言わんがごとく行われる法と裁判所による私刑では、本当のDV被害者の保護は行えません。

そこで、迅速な手続きを維持し、DV被害者の保護の質を下げない事は当然ながら、「DVで訴えられた人たちの人権」にも配慮した形の法改正により、本当の意味でのDV、社会からの暴力の根絶の大きな一歩として頂きたく、創設する新制度の法案、その要点のみに止まりますが、以下の法改正の提案をさせていただきます。

・「DV防止のための調停」の新設

・「DV防止のための調停」では、申立人、被申立人は、共に外部のカウンセラーなどのカウンセリングを受けなければならない

・「DV防止のための調停」で行われるカウンセリングには、後述の保護命令のための調査としての機能も与えられる

・現在のDV防止法の保護命令は「接近禁止の仮処分」と「DV事実の存在確認の訴え及び保護命令」(以下、「保護命令のための手続き」とも表記している)とに分離する

・「接近禁止の仮処分」と「DV事実の存在確認の訴え及び保護命令」の申し立ては同時に行わなければならない

・裁判所は「接近禁止の仮処分」の申し立てが行われた時点から、「保護命令のための手続き」を始めなければならない

・保護命令のための手続きは、手続きの開始と共に「DV防止のための調停」も開始しなければならない

・「DV防止のための調停」は「接近禁止の仮処分」や「保護命令のための手続き」と独立して申し立てる事もできる

・「DV防止のための調停」と「接近禁止の仮処分の申し立て」が同時に行われた場合、裁判所は、仮処分の申し立てを認めなければならない

・「接近禁止の仮処分」の期間は半年以内で延長や更新は認めない。また、「DVの事実が認められない場合」、即時にその効力を失う

・「接近禁止の仮処分」には、DVが存在したという証拠力を認めない。また、仮処分に伴う別居期間は民法819条第2項における子の監護実績の算定に含めてはならない

・「接近禁止の仮処分」は、面会交流を拒絶する根拠、間接交流など親子断絶の理由としてはならない

・「DV事実の存在確認の訴え及び保護命令」の手続きでは、裁判官は「DVの事実」について事実認定を行う。その際、「DVを防止するための調停」でのカウンセリングの結果も斟酌しなければならない

・カウンセリングの中で、被申立人にDVの事実が認められない場合、裁判官は保護命令を発令してはならない。この場合、カウンセリングに伴う別居期間は民法819条第2項における子の監護実績の算定に含めてはならない

・カウンセリングの中で、明らかに被申立人による配偶者への暴力が認められ、かつ、被申立人がDVについて積極的に学び、再発防止のために真摯に取り組んでいると認められる場合、裁判官は、保護命令に代わり「DV再発防止のカウンセリングの継続」を命じなければならない

・カウンセリングの中で、明らかに被申立人による配偶者への暴力が認められ、かつ、DVについて学ぶ事を拒絶し、再発や悪化の恐れが認められる場合、裁判官は、保護命令を発令し、同時に「DV再発防止のカウンセリングの継続」を命じなければならない

・「DV再発防止のカウンセリング」および「DV再発防止のカウンセリングの継続命令」にはDVが存在したという証拠力を認めない

・「DV再発防止のカウンセリングの継続命令」を、面会交流を拒絶する根拠、間接交流など親子断絶の理由としてはならない

・裁判官は、DV被害者に対し申し立てられた面会交流について、DV被害者が暴力や連れ去りの不安を訴えた場合、被害者と子の安全のため、警察の施設内での面会交流を命じる事ができる

・裁判官は、DV被害者に対し申し立てられた面会交流について、「接近禁止の仮処分」、「DV防止のための調停」の間、被害者の安全のため、警察の施設内での面会交流を命じなければならない

・裁判官は、DV被害者に対し申し立てられた面会交流について、その申立人が、「DV再発防止のカウンセリングの継続命令」を受け、かつ、カウンセリングを受けている場合、警察の施設内での面会交流を命じなければならない


まず、「接近禁止の仮処分」と「保護命令」についてです。

仮処分と確認訴訟は、民事裁判では様々な形で行われている既存の法システムです。

現行の保護命令は「接近禁止の仮処分」とし、迅速な被害者保護のための手続きと言う側面は維持します。
これに加え、「証拠がないのにDV加害者にされる」を防ぐため、DV事実の存在を確認する民事裁判と、その上での保護命令を発令するという、本物の加害者にはとても厳しくなる内容にします。

 また、現行DV防止法の悪用法として、いわゆる「離婚や別居に伴う子の連れ去り」という事案が多発しており、マスメディアでも報道されるようになっています。
民法819条第2項では、裁判上の離婚の際、裁判所が父母の一方を親権者に選ぶ事になっています。そこで、離婚と共に子供の親権を得るために、事の真偽は別にDV被害を訴え、被害者保護の名目で子供と共に家を出て、加害者、この場合、離婚相手となる他方配偶者との接触を拒みながら、子の監護実績を積み重ね、裁判所による親権者の選定を有利にするという訴訟戦術が当然の様に採られており、裁判所もその卑劣を、法を理由に認めています。

そのため、「虚偽のDV被害を訴えた事が明らかな場合でも、『大前提』によって、DVをでっち上げた者が親権者となる」という、一般的には受け入れられないような不義が罷り通る事になっています。

ちなみに、この「大前提」というのは、東京高等裁判所の判事のお言葉との事です。

 さらに、この問題は、離婚後の別居親と子供との面会交流にまで悪影響を及ぼし、「引き離し」「片親疎外」として、こちらもマスコミで取り上げられる事が増えています。

 この「引き離し」とは、DV被害を訴え、子供を連れ出した同居親が、加害者、この場合、別居親のネガティブな情報を子供に吹き込む事です。
別居親に逢って直接事の真偽を確認する事も許されず、一方的に別居親のネガティブ情報を与えられ続けた子供は、その後の面会交流調停などでも「別居親に逢いたくない」など、別居親との面会に否定的な反応を示すようになってしまい、こうなると、加害者には、これを覆す方法はありません。

そのため、裁判所による間接交流など親子断絶の口実とされ続けています。

 DV防止法とは、DV被害者を凶悪な加害者の暴力から守るための法律、命を守るための法律です。

 この様な、親子関係を破壊するための法律になっているという事は、これまで犠牲となった多くのDV被害者への冒涜と言わざるを得ません。

そのため、あくまで「被害者保護のための接近禁止の仮処分」では、子の監護実績と完全に分離する事を提案しております。

次に、「DVを防止するための調停」についてです。

この調停は、申立人(被害者)と、その訴えの相手方(加害者)、当事者双方の話を充分に聞き、その家庭内の問題の解決を目指すものです。

DVの解決と防止のため、双方からの聞き取りを通じ、認識の溝を埋め、予防や解決のため、具体的な取り組みを当事者で考える手続きとなります。

DVについて、双方ともに「DV防止のためのカウンセリング」を受けてもらい、「DV」に対する理解を深めてもらうと同時に、自分たちの関係についても考えてもらう機会を設ける。

ここで重要な点は、「当事者の双方がカウンセリングを受ける」という点です。カウンセリングは処分や制裁とは根本的に異なります。
片方だけが受けるのでは、処分や制裁と同じで意味がありません。

また、DV防止法の目的が、「未来のDVを防止する事」であり、加害者に対する制裁でも、被害者による悪用を認めるものでもないという事を示す意味もあります。

それと、この調停の目的は、「DVの被害者と加害者に和解と復縁と言う、共生の選択肢を与える事でもあります。

現在のDV被害者の保護の支援では、支援者が保護の前提、加害者との共依存関係を解消させるため「離婚をするという誓約書を書かせる」という話もあり、これが、「離婚を有利に進めるため、とりあえずDV被害を訴える」という話の原因となっています。

現在のDV被害者の保護は、「離婚をしないなら、被害者が加害者に殴り殺される」か「離婚をしたい人のためのDV被害者保護」という、極端な選択肢の中で行われており、バランスが取れているように見えているのは、「DVは離婚」という結果だけが始まる前から既に決まっているからです。

そして、このような手続きが、DV被害者保護の名の下、終始一貫して行われるため、DVで訴えられた方たちには、「DVで訴えられた事」と「被害者保護の名のもとに行われる理不尽への反発」しかなく、「DVとは何か?」「ご自分の家庭生活や夫婦関係の在り様に問題はなかったか?」など、一切考える余裕が無く、とにかくDVの事実や存在を否定する事しかできず、「DV被害の再発防止」には有害無益でしかありません。

現在のDV被害者保護による問題は、加害者への心理的な悪影響に止まりません。

それは、加害者が子供の片親であり、子供の命と人格の半分はDV加害者でできているという事です。それを社会的に貶め排除する事で、子供の人格まで貶め排除されている事が完全に見過ごされてしまっています。

離婚では、子供たちも、親が目の前で争う事で、親と家庭を心理的に奪われます。 その上、現在問題となっているような、一方的な、制裁的な対応により、片親を貶められ排除された子供たちは、社会的にも親を奪われます。

虚偽のDVの訴え、でっち上げDVとは、加害者に対する人権侵害であると共に、親が子供の人格を否定する行為であり、被害者保護に名を借りた、一方的かつ制裁的な加害者対応とは、加害者に対する正義の執行であると共に、子供の片親を社会的に抹殺し、子供を否定する行為になる事を忘れてはなりません。


さて、DVに話を戻します。

DVの恐ろしい所は、加害者だけではなく被害者も同じことを繰り返す事にあります。
本物の加害者は、嗅覚で被害者を見つけ出す事ができ、本物の被害者は、なぜか加害者となる傾向のある人物を何度でも選んでしまいます。
せっかく子供の心を犠牲にしてまで離婚をしても、再婚し、同じような事を繰り返してしまっては意味がありません。


その上、離婚後の母親とその内縁の男性の虐待による子供の虐待死事件の報道が毎年の様にあり、この陳情書を執筆している2018年6月にも、DVが関係した事案ではないですが、児童相談所が中途半端に介入しながら、その手を逃れた実母とその夫により、5歳の女の子が殺害されています。

これは「再婚の危機」と呼ばれる離婚家庭の心理的な問題もあり、「離婚のための法律」と言って差し支えない現行DV防止法でも、離婚後の夫婦、子供をサポートする方法がなく、「DVを防止するための法律」としては、あらゆる点で不足しています。


そのため、当事者には、被害者、加害者など関係なく、カウンセリングを受けていただき、自立や再婚など、未来に向けた取り組みにして頂く事が必要だと訴え続けています。

そして、これは、裁判所にとっては、保護命令発令のための調査手続きでもあります。

調停を申し立てた時点で半年の接近禁止期間を設けることになりますが、半年間の調停、外部のカウンセリングの後、接近禁止命令を発令するか、その内容などを裁判官が判断する形にする事で、「証拠もないのにDV加害者にされる」という当事者への人権侵害を防止します。

 その上で、加害者にDVの事実が認められない場合には、「接近禁止の仮処分」と同様、カウンセリングに伴う別居期間を子の監護実績の算定から外す事で、「離婚をするならとりあえずDVで訴える」という、法律の悪用を防止する事も提案しております。


4、第五章および第六章について

DV防止法第五章では雑則として、DV被害者に対する理解と配慮を職務関係者に義務付け、DVの理解を深めるための啓発や被害者の支援に対する費用の支弁や援助を定めています。

しかしながら、DVの他方当事者に対する配慮は定められておらず、先に述べたような自治体や警察、支援者による制裁的な対応、「私刑」が、「DV加害者への対応」として公然と行われ、特に問題視されてこなかった事は、DVの根本的な問題点を放置し、複雑化させた原因となっています。

そこで、第一章の二でも、「被害者及び加害者への配慮を踏まえたものでなければならず、かつ、加害者への制裁となるものを含めてはならない」という改正を提案させていただきましたが、「被害者への配慮等」を定めた第五章にある第二十三条、「職務関係者による配慮等」でも、「被害者及び加害者への配慮等」とする事で、DV防止法の「DVを防止する」という目的をより明確にした上で、現場の自治体や警察、裁判所の職員の啓発を促す改正を求めたいと思います。

加えて、配偶者に対する殺人、暴行傷害、遺棄、逮捕監禁、脅迫、など、DVを刑事罰の対象とする事も提案いたします。

DV防止法は施行から15年を経過しており、社会的にも被害者の保護に加え、DVそのものを法的に抑止する必要性に対する理解も深まっていると思われます。

その上で、先述した、「離婚裁判を有利に進めるため、とりあえずDVで訴える」という「虚偽DVの訴え、でっち上げDV」と呼ばれる被害者側の行為が放置されている事に対する法的抑止の必要性も提案いたします。

DV防止法第三十条でも、一応虚偽の内容を記載した保護命令を申し立てる事に対し罰則が定められているものの、これが充分に適用されていない状況であり、それにより本当のDV被害を訴えている人たちまで疑わせる事となり、救済の最大の妨げになっています。

2015年には、愛知県警が、本来ならDV防止法の適用対象外だった男性に対し、DV防止法の被害者保護の名目で違法且つ不当な行為、人権侵害行為を行った件に対し、虚偽告訴罪などによる被害男性の訴えを「対応する法律がない」事を理由に拒絶しています。

国の行為により人権が侵害された場合、その被害者は救済されなければならない事は、日本国憲法第17条でも定められております。
しかしながら、この愛知県警による対応は、DV防止法が日本国憲法の秩序の中に存在していないものだという事を示すもので、要は、法律ですらない事を意味するものです。

以上の理由から、以下では、DV防止法の第五章と第六章の改正案について、法案の要点と第二十三条の具体的な改正案を挙げさせていただきます。

・DV防止法第六章に、刑法の第二十六章殺人の罪、第二十七章傷害の罪、第三十章遺棄の罪、第三十一章逮捕及び監禁の罪、第三十二章脅迫の罪、第三十四章名誉に対する罪に相当する、「配偶者などに対する罪」としてそれぞれ定め、DVを刑事罰化する

・「配偶者などに対する虚偽告訴の罪」を定め、虚偽のDV相談を行った者、それにより自治体や警察などから被害者保護の措置を受けた者は、刑法第二十一章虚偽告訴の罪の対象とする

・「配偶者などに対する罪」の量刑は刑法のそれに従う

・自治体及び警察は、「配偶者などに対する虚偽告訴」の相談や告発があった場合でも、被害者への保護措置を中止してはならない

・自治体及び警察は、「配偶者に対する虚偽告訴」による相談及び告発を、被害者保護を理由に拒んではならない

・裁判所は、「配偶者に対する虚偽告訴」による告発が受理された場合であっても、既に申し立てられている手続きを継続しなければならない

・「配偶者に対する虚偽告訴」による告発には、DVの事実に対する証拠力を認めない

・加害者が「配偶者などに対する罪」で無罪となった場合、裁判官はそれを理由に申し立てられた保護命令を発令してはならず、既に発令された保護命令は効力を失う。また、公判に伴う別居期間は民法819条第2項における子の監護実績の算定に含めてはならない。

・加害者が「配偶者などに対する罪」で無罪となった場合、自治体及び警察は、それを理由に開始した被害者保護の措置の内、加害者への対応に関しては、直ちに停止しなければならない

・被害者が「配偶者などに対する虚偽告訴の罪」で有罪となった場合、裁判官はそれを理由に申し立てられた加害者への保護命令を発令してはならず、既に発令された保護命令は効力を失う。また、保護命令の手続きに伴う別居期間は民法819条第2項における子の監護実績の算定に含めてはならない。

・加害者が「配偶者などに対する罪」で無罪となった場合、及び、被害者が「配偶者に対する虚偽告訴の罪」で有罪となった場合、裁判官は「DVを防止するための調停」を継続し、両当事者に対しカウンセリングの継続を命じなければならない

(職務関係者による配慮等)

第二十三条 配偶者からの暴力に係る被害者の保護、捜査、裁判等に職務上関係のある者(次項において「職務関係者」という。)は、その職務を行うに当たり、被害者(加筆:および加害者)の心身の状況、その置かれている環境等を踏まえ、被害者(加筆:および加害者)の国籍、障害の有無等を問わずその人権を尊重するとともに、その安全の確保及び秘密の保持に十分な配慮をしなければならない。

以上になります。


以上


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さとう社会問題研究所「請願書」