さとう社会研究所・さとう心理コンサルティングは、2024年9月5日、○○刑務所長、法務大臣、日本弁護士会連合会に対し、以下の内容の請願を行いました。
請願は郵送の形式によって行いました。

請願解説:

今回は刑務所の方から依頼を受けた請願です。

刑務所内での出来事について理不尽な懲罰を受ける恐れがあるとの事。ぜひ、お辞め頂きたく急ぎ請願書を執筆提出しました。

理不尽な懲罰は更生を妨げるリスクしかありません。

また、それ以上に「赤バッチ」と呼ばれる方への管理指導体制に大いに疑問があり、法務大臣と日本弁護士会連合会に調査の上、対応、監視をお願いいたしました。

以上の内容を踏まえた内容となっております。


請願書
(注:事件の特定につながる情報、当事者の個人情報に該当する部分は表示しておりません)


請願事項:

 私、さとうかずやは、日本国憲法第16条と請願法に基づき、以下の請願を行います。

1、○○○刑務所長には、○○○○○○さん(所内では○番との事)に対し、本請願書記載の事案(本件)について不利益な扱いをなさらぬ事、又は、すでに何らかの不利益な扱いがなされている場合はその撤回をお願い申し上げます

2、本件と類似の事案に対しても理不尽な処分で所内の環境を悪化させ、受刑者の方々の更生意欲を損なう事のない様、対応の改善を求めます

3、法務大臣には刑務所運営の最高責任者として、刑務所の運用について、本請願書記載の「赤バッチ」と呼ばれる方々について、特に心理的観点から調査及び実態把握を行った上、本件類似の事案の再発防止への指導、管理及び待遇などの改善をお願い申し上げます

4、日本弁護士会連合会には、弁護士法第1条に基づき、本件及び類似の事案により、○○○○○○さんや他の受刑者が不利益な処分を受ける事で更生に妨げられる事のない様、人権の擁護者として調査及び監視に努めていただける様、お願い申し上げます


請願理由:

2024年9月4日、お手紙にてカウンセリングを行っている○○○刑務所内の○○○○○○さんから請願の依頼を受けました。
事情などを記したそのお手紙に基づき本請願を行います。

一、お手紙

(請願書では文字起こししたものを記載しておりますが、こちらでは省略します。)

二、はじめに

○○○○○○さんのお手紙は、かなりまとまっている様に思えました。
これだけでも充分に請願として意味あるものと考えておりますが、わたくしからも補足的に述べたいと思います。
まず、お手紙を読んだ時、私自身の子ども時代、特に小学校生活で受け続けた理不尽な仕打ちを思い出しました。
わたくしは20歳以前の記憶をほとんど失っており、同級生の顔も名前も覚えておりません。ただ、学校で受けた理不尽な仕打ちだけは覚えております。
 わたくしも一方的に暴力を振るわれ、反撃をしようとするとクラスの全員に止められ、先生からは「お前が悪い」と言われておりました。
 一方的に殴られて反撃も許されず被害者なのに悪いと言われる、本件における○○○○○○さんへの○○○刑務所の対応と全く同じであると感じました。
 わたくし自身は、自分を「生きていてはいけない人間」と理解し、30年以上孤独な人生を歩んでおります。それが刑務所の考える更生なのかという点には興味があります。

お手紙にある○○○○○○さんのお話は、それを思い出させてくれるものでした。いわゆるフラッシュバックです。同時に、社会では刑務所内における虐待が散々問題になっているという報道があるにもかかわらず、未だに続いているのだなと感じました。
恐らく、何がどう問題で、どう改善すべきかも正しく理解ができていないのでしょう。
そして、赤バッチと呼ばれる方たちが、何の指導や管理もなく、○○○○さんの様な方と同じ場所に置かれている事に懸念を抱きました。

三、本件における2つの主な問題点

・本件における懲罰とは、法的安定性及び予見可能性の観点で不当なものであり人権侵害であるという事
・刑務所内における「赤バッチ」と呼ばれる方々がレッテルを貼られるだけで放置されている状態であるという事

 この2点を本件における主な問題点として挙げて話を進める。

1、法的な問題点

○○○○さんのお手紙の内容が真実である場合、○○○○○○さんの対応は当然、暴力に訴えたものではなく、あくまで口頭にてお願いしているに過ぎず、その内容も至極当然のもの。
対して、この理不尽さ、不当さについて、○○○○○○さんのお手紙から言葉を引用すると、

3頁「これを持ってケンカ、口論成立ならば、絡まれた方はどうしようもありません。
あくまで一方的にケンカをふっかける方が悪いはずです。」

と言う言葉通り、「所内の秩序」と口実とするにしても、本件の場合、その秩序やルールには法的安定性と予見可能性の点から疑問である。
本件で言う○○○○○○さんへの懲罰理由は本件加害者(以下、赤バッチさん)から「一方的にケンカを吹っ掛けられた事」であり、被害者が「辞めて欲しいと伝えた事」で罰せられるという事。平和的解決法の否定であり法的安定性が皆無である。
喧嘩両成敗など、現在ではイジメ事案でも被害者に対して言わないような懲罰理由なら、あまりにも一般的ではなさ過ぎて、ただ罰を与える口実という以外の意味はない。

また、「刑務所の特別性」を理由にするとして、法務省が日本国内に刑務所という名の主権国家を設立したと理解することは明白な間違いである。
 刑務所の運営は、あくまで日本国の法と法理によって行われるべきであり、法治国家である日本における社会のルールとは、法的安定性及び予見可能性が何人にも担保されているものでなければならない。

そもそも、予見可能性と言う点では、本件は赤バッチ、即ち素行が悪く他者とトラブルを起こす可能性のある人物を適切に管理できていなかった刑務所側の責任である。
 この難しい話を一言で言うなら、「あなたたちなら、どう正しく対応していたのか?」という事である。本件において、○○○○○○さんは赤バッチさんにどう対応すべきであったか?という説明を刑務所は事前に用意できていたのか?
少なくとも、私には「止めてくれ」とお願いする以外の方法は思いつかない。それを罰するという事は、刑務所における虐待行為であると断言せざるを得ない。

2、赤バッチがタダのレッテル貼りでしかない事への疑問

お手紙記載の「赤バッチ」の実態について、刑務所が適切に把握し対応ができていない、又は、○○○○さんの様な不利益な扱いを受ける被害者を生み出すため、故意に野放しにしている事に疑問がある。
お手紙にある赤バッチと呼ばれる方々を放置することへの危険は○○○○○○さんの記述が正にこれを指摘している。

2頁
「何度も懲罰をくらい、何度も工場を移動している人間は、人の仮釈放を邪魔して取り消させたり、真面目にやっている人間をイジメて工場を飛ばしたりとやりたい放題ですが、残念ながらここ刑務所にはそのような人間が沢山います。
赤バッジから下はもうありませんし、仮釈放も無いので真面目にやっている人の足を引っ張る事に楽しみを見出している連中です。そんな人間に今日絡まれてしまいました。」

3頁 「・自分が工場にいたくないからと、自分を巻き込んできましたが、赤バッチの成功体験に力を貸す形になってしまいます。これでは赤バッジがますますやりたい放題になり真面目にやっている人間は防ぎようがない。」

4頁
「それでも必死に止めてもらおうとした方まで工場移動プラス懲罰では、絡まれた方はどうする事もできませんし、またペナルティもメチャクチャに重すぎます。また、このような理不尽な対応になる可能性を知っていて態と赤バッジは人に嫌がらせをします。」
「他にも理由があったのか工場に居づらいからと私を巻き込むのは許してはいけないと思う。」
「またこの刑務所生活が自分のやる気や更生意欲ではなく、赤バッチ次第になります。
どれだけ更生の気持ちを持っても、赤バッジに目をつけられたら今の私の様に全て終わってしまうからです。」

これらの指摘から分かる通り、赤バッチを放置することによる社会組織的リスクは主に2つ。一つは、「悪貨は良貨を駆逐する」とも呼ばれる「グレシャムの法則」。本件の様に他者を巻き込む事により、全体の環境を悪化させるリスクである。もう一つは、赤バッチさんご自身の更生に対する懸念であり、同時に刑務所の在り様と存在意義への疑問である。

明言しておくが、赤バッチと言う評価の存在そのものを問題視している訳ではない。
評価をしておきながら、それに応じた対応が適切になされていない事を問題視している。評価だけして何もしないのなら、その評価はレッテル貼りでしかない。
 「刑務所を独立国家であると理解するのは一見にして明白な間違いである」と指摘したが、「青バッチなら刑務所内で買い物ができて、赤バッチは許されない」という類の評価方法でしかないと言うのなら、それは身分制に他ならない。

この赤バッチさんとは、様々な理由はあるであろうが、刑務所としては素行が悪いと判断している人物であり、社会的には「諦めた人」であり、いわゆる「無敵の人」である。
 ○○○○○○さんのお手紙にある赤バッチの記述は、この「諦めた人」や「無敵の人」と一致する部分が多い。刑務所では否定的な評価を下されながら、それを改善するための配慮や働きかけを受けることなく、放置されてしまっている。

そのため、誰にとってもレッテル貼り以外の意味を持たず、「諦めた人」「無敵の人」となった結果、躊躇なく他者に危害を加えられる。
畢竟、赤バッチとは、他人の足を引っ張り負の成功体験を積み重ねる事で刑務所における真の支配者となっている事を意味している。

3、本件で○○○○○○さんを懲罰にかけようとする○○○刑務所への疑問

本件における○○○○○○さんは、その赤バッチさんの自暴自棄に巻き込まれただけの被害者であると考えるべきである。お手紙には前日にも同様のトラブルがあったともある。
そして、その加害者である赤バッチさんに対しても、レッテル貼るだけで何もせず、○○○○さんに危害を加えさせた刑務所側の指導及び管理の不手際である。
言い替えるなら、○○○○○○さんへの懲罰の動きは、その刑務所側の管理及び指導力不足の責任を受刑者である○○○○○○さんに負わせるだけの責任転嫁に他ならない。
これを一般的にはパワーハラスメントと言う。

○○○○さんのお手紙から、赤バッチに位置付けられている方は、刑務所内で更なる挫折体験を繰り返しており、結果、「諦めた人」「無敵の人」になっている恐れがあると感じた。
また、出所後の社会生活においても、他者と良好な関係を築くメリットではなく、刑務所で学んだ奸佞邪智により他者を陥れるメリットを知るからこそ、再び犯罪に手を染める様になるのではないか?
まさかとは思うが、刑務所と言う箱だけ作って、犯罪者を放り込んで放っておくだけで犯罪がなくなるなどと本気で考えている訳ではあるまい。

 学校での体罰や職場におけるパワハラなど、理不尽や暴力が指導や教育として機能しない事については、近年の社会問題化により、更に知られる事になっている。
罰を与えてレッテルを貼って気持ち良くなるのは支配者気取りの者に過ぎず、本人の何の成長にもつながらない。これは学校教育における非行の作り方であるが、ブラック企業のパワハラと構造は全く同じである。

最近だと兵庫県知事によるパワハラ、それを告発した人物を違法かつ不当に処分した事で自殺に追いやった件が注目されている。
兵庫県知事が告発者に対し、公益通報者保護法を無視して処分を行ったのも、自身に対する告発を闇に葬るための先制的自衛権の行使のおつもりだったと指摘されており、本件における○○○○○○さんへの懲罰も、赤バッチさんに対する管理指導の不手際と向き合おうとしていない点では一致している。

本件は刑務所側の不作為が引き起こした問題であり、可能な限りの対応を取った○○○○○○さんを罰することは、自らの失態を擦り付けるだけのパワハラ行為に過ぎない。
 素行が悪いと分かっている人物を野放しにすれば、いずれ他者を巻き込むトラブルを引き起こすことは容易に想像がつく。
 本来、こういう方こそ注意して向き合うべき方であるにもかかわらず、それを怠るばかりか、他の受刑者に対応を丸投げし、起こるべくして起こったトラブルに懲罰だけ下す。
仮に、○○○刑務所が本件において平和的解決を図ろうとした○○○○○○さんに懲罰とやら科すのなら、それは教育や指導という名の虐待、人権侵害に他ならない。

虐待や暴力とは有形力の行使だけではない。
機能不全家族ではメインとなる精神的、経済的な虐待は知られるようになっているが、兵庫県知事や本件における○○○刑務所の様な正当な行為に見せかけた支配や権力を通じた虐待や暴力、指導や教育、躾を口実とした暴力は、外からも被害者自身にも見えにくい。
 ルールや立場の名目で行われる理不尽は自覚が得にくく指摘されても理解できない場合が多い。兵庫県知事が正にその状態である。
 私は、本件における○○○刑務所も同様の心理的構造になっている事を懸念している。

四、○○○○○○さんがトラブルを起こす動機がない

状況を見ても、○○○○○○さんのお手紙からは、トラブルを引き起こす動機が見当たらない。
まず、本件発生日である2024年8月21日は、ご尊父との面会日であったとの事。
前回のお手紙にて、「父との関係性はこれまでになく良好」とお返事いただいており、猛暑の中、面会に来る父親を袖にするとは考えにくく、わざわざこの日を選んでトラブルを起こそうと考えるとは想像しにくい。
また、今回のお手紙にもある通り、○○○○さんは刑務所の中にありながら夢や目標を持ち、工場内で推薦を受けているなど、それに邁進する日々をお過ごしとの事。
 これらの状況において、わざわざトラブルを引き起こし自らを不利な立場に追いやる事にメリットがない。

これらの点から、○○○○○○さんは、あくまで穏便に解決を図ろうとしていた可能性があると考えるべきである。

五、おわりに

 法務大臣と○○○刑務所長には、この請願をもって「刑務所が何のためにあるのか?」を改めてお考えいただきたく思います。
 また、○○○刑務所長には、学校でも家庭でも理不尽にさらされ続けた虐待被害者として「罪なき者に罰を与える事の卑劣さと有害さ」を知っていただきたく思います。

最後に、日本弁護士会連合会には、国の機関ではないため請願の対象ではないものの、弁護士法第1条に基づき、本件についてご対応いただける様お願いいたします。


以上


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さとう社会・心理研究所「請願書」